不妊治療がつらいと感じる方へ…
治療中のメンタルケアや対処法
不妊治療を受ける約半数が軽度の抑うつ状態に
不妊治療を受けている女性の多くが、さまざまな理由でつらさを感じています。その要因は、精神的・身体的・経済的負担や孤独感、周囲からのプレッシャー、仕事との両立など多岐にわたります。
国立成育医療研究センターの調査によると、体外受精などの高度不妊治療を受ける女性の54%が、治療開始の初期段階で既に軽度以上の抑うつ症状を抱えていることが明らかになりました。また、不安が高まっている状況と判定された割合も39%と高く、不妊治療は身体的な負担だけでなく、心の健康にも影響を及ぼすことが多いことがわかりました。
※出典 国立成育医療研究センター「体外受精などの高度不妊治療を受ける女性の約半数が 治療開始初期の段階で、すでに軽度以上の抑うつ症状あり」
不妊治療がつらいと感じる要因
不妊治療には、身体的・経済的な負担に加え、精神的な負担も伴います。それに付随してつらいと感じる場面があり、これらの要因が相まって不妊治療は心身に大きな影響を与えることが少なくありません。
身体的な負担:副作用や体調不良がある
不妊治療では、ホルモン剤の影響により身体にさまざまな副作用を引き起こすことがあります。特に高度不妊治療(体外受精や顕微授精など)の場合は、検査・投薬・自己注射・採卵などがあり治療による副作用や痛み、体調不良が起こる場合が多く、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。
身体的な負担:仕事との両立が難しい
不妊治療は、生理周期に合わせて定期的な通院や検査が必要です。急に受診日が決まったり、変更になったりすることがあるため、仕事との両立が難しくなることがあります。急な予約や体調の変化で負担を感じることもありますが、医療者や職場の理解を得ることで無理なく両立できる場合もあります。
経済的な負担:治療が長引くほど費用がかかる
現在、不妊治療は条件付きで保険が適用されるようになり、以前よりは経済的負担が軽減されています。しかし、高額な医療費がかかるため、治療が長引くほど経済的な負担が大きくなります。
精神的な負担:リセットするごとに落ち込む
妊娠を目指した努力が実を結ばず生理がきてリセットとなった場合、落ち込みを感じることがあります。リセットが続くと、希望を持ち続けにくいと感じる方もいらっしゃいますが、信頼できる医療者のサポートを得ることで、不安を和らげながら治療を続けていくことができます。
精神的な負担:パートナーや周囲との温度差
不妊治療はパートナーとの共同作業であり、治療は長期にわたることが多いためパートナーとの協力が必要不可欠です。互いの気持ちや考え方に温度差があるとコミュニケーションが難しくなり、孤独感やストレスが増大する要因となります。また、親や周囲からのプレッシャーにより、精神的な負担を感じる方も少なくないでしょう。
精神的な負担:情報に振り回される
不妊治療を始めたときや、治療を繰り返してもなかなか妊娠しないときは、常に頭が不妊治療のことでいっぱいになり、さまざまな情報をネットで探すことが多くなるでしょう。不妊治療に関する情報は多岐にわたり、なかには信憑性に欠ける情報もたくさんあります。ネットや周囲からのアドバイスが混乱を招くこともあり、正しい情報を見極めることが難しいため、かえって不安やストレスを感じる場合もあります。
不妊うつ(妊活うつ)とはどのような状態?
不妊うつ(妊活うつ)とは、不妊治療や妊活によるストレスが原因で心身のバランスを崩してしまい、抑うつ状態になったり、うつ病を発症したりする状態のことです。正式な病名ではないため診断されることはありませんが、専門家への相談が必要な心の不調です。持続的な悲しみや不安感、興味や喜びの喪失、不眠などの身体的症状が現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。このように不妊うつは心の健康に大きな影響を与えるため、早期のサポートと理解を通じて、適切な対処法を見つけることが重要です。
不妊うつのチェックリスト
下記のような状態が続くと、不妊うつにつながる可能性があります。まずはチェックリストを参考に、今の自分の気持ちや状態を見つめ直すことが大切です。
- 楽しさや喜びを感じられない
- 妊娠へのプレッシャーが強くなっている
- 不妊治療を始める前より眠れなくなった
- 妊娠できない自分を責めてしまう
- パートナーに対して不満を抱くことがある
- 周囲の幸せを素直に喜べない
- 周囲の妊娠を自分と比べてしまう
- 妊婦を見ると感情が不安定になる
つらい不妊治療中のメンタルの保ち方
パートナーに気持ちを伝え、意見をすり合わせる
不妊治療を始める際には期待感を持ってスタートするものの、妊娠は思い通りには進まないことが多いです。一人で頑張るものではなく、パートナーとしっかり話し合い、価値観をすり合わせることが重要です。つらいと感じている場合は、我慢せずパートナーに伝えましょう
〈女性側〉伝え方のポイント
不妊治療中のメンタルを保つためには、パートナーに対して具体的に気持ちや要望を伝えることが重要です。「もっと主体的になってほしい」「とにかくつらい」といった抽象的な表現ではなく、「週に〇回は病院に同行してほしい」や「タイミングの週は〇時までに帰ってきてほしい」など、具体的にお願いすることで相手にもわかりやすく伝わりコミュニケーションが円滑になります。
〈男性側〉パートナーを支えるには
不妊治療中のパートナーを支えるためには、女性に言われる前に男性側が主体的に治療についての知識を身につけ、当事者意識を持つことが重要です。女性が病院に通うことが多いなかで「今日はどんな治療をしたの?」と男性側から尋ねることで、女性に安心感を与えることができます。
SNSや友人から距離を置いてみる
不妊治療中は、友人・知人の懐妊報告やSNSからの不要な情報で心を乱されることがあります。そのため、最近妊娠した友人とは無理に付き合わず連絡を控えたり、一時的にSNSから距離を置くこともメンタルを保つひとつの方法です。
不妊治療から離れてみる
不妊治療から離れて休息を取ることは、メンタルを保つために非常に重要です。心が疲れている自分を受け入れ、無理にポジティブになろうとせず感情に正直になりましょう。ストレスを感じたらリラックスできる時間を意識的に確保し、旅行や趣味などご自身が最もリラックスできる方法でストレスを解消してください。ヨガやストレッチ、ウォーキングなどで身体を動かすことも心身のリフレッシュにつながります。いつもと違う体験をすることで、今後の生活についての新たな視点を得ることもできるでしょう。
カウンセラーに相談してみる
友人など信頼できる相手に話を聞いてもらうことで気持ちが軽くなることもありますが、世間一般の不妊や不妊治療への理解はまだ十分とは言えません。ストレスの軽減につながらない可能性もあるため、友人への相談は慎重におこなったほうがよい場合もあります。
専門のカウンセラーに相談することで、精神的なつらさや不安、パートナー関係の悩みを軽減できるだけでなく、不妊治療に関する情報提供を受けることもできます。ご自身の状況に合った解決策を見つけましょう。
不妊治療は一人で悩まず、専門家へ相談を
パートナーに気持ちを伝え、意見をすり合わせる
不妊治療は身体的・経済的・精神的負担により、心身ともにつらいと感じる方が多いです。そのため、悩みや不安は一人で抱え込まず、パートナーと支え合うことが重要です。また、専門家や相談窓口に頼ることで、より良いサポートを受けることもできます。悩みや不安を共有し適切なアドバイスを受けることで、前向きに治療に取り組むことができるでしょう。神奈川レディースクリニックでは、患者様の体調や気持ちに寄り添い、ひとり一人に合った最適な治療を提供しています。
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神奈川レディースクリニック
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神奈川レディースクリニック理事長 兼 院長
山本 篤 医師
神奈川レディースクリニックは、2003年の開院以来「無理のない医療」を大切に、患者様に寄り添ってまいりました。私もその理念を受け継ぎつつ、新しい医療の可能性を取り入れ、ご夫婦の未来を支える医療を実践していきたいと考えています。
妊活や不妊治療は目に見えない体の変化に向き合うため、不安を感じることも少なくありません。私は体の中で起きていることや今後の見通しを丁寧にお伝えし、納得感を持って治療に臨んでいただけるよう心がけています。
経験と最新の知見を融合させ、安心できる場で最先端の治療を提供してまいります。どうぞ安心してご相談ください。