体外受精の成功確率は?
妊娠率を高めるために
できることSUCCESS RATE OF IVF

体外受精はどんな治療?

体外受精は不妊治療のひとつで、採取した精子と卵子を体外で受精させる方法です。受精の後、受精卵(胚)を妊娠しやすい状態に培養し、子宮に戻して着床を促します。

体外受精は「生殖補助医療(ART)」に分類され、一般的な不妊治療よりも高い確率で妊娠が期待できます。2022年には、生殖補助医療によって77,206人の赤ちゃんが誕生しており、これは約10人に1人の割合となります。

年齢別にみる体外受精の
成功率

妊娠率は年齢によって左右されます。加齢によって卵子の質・数は低下し、妊孕性(妊娠できる力)も下がっていくためです。
体外受精においても、高齢になるほど成功率は下がる傾向にあります。

ここでは、日本産婦人科学会の2022年のデータをもとに、胚移植1回あたりの年齢別体外受精(顕微授精を含む)の成功率を紹介します。 参考:公益社団法人日本産婦人科学会「2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

20代(29歳以下)の体外受精の成功率

20代の体外受精の成功率は、平均48%程度です。
最も妊娠率が高く、年齢が若いほど早く妊娠に至る傾向にあります。

30代後半(35~39歳)の体外受精の成功率

30代後半の体外受精の成功率は、平均39%程度です。
統計的には35歳を境に、妊娠率の低下が顕著になる傾向にあります。しかし、40歳未満であれば胚移植4回目までに7割以上の方が妊娠に至るとされています。

40代(40歳以上)の体外受精の成功率

40代の体外受精の成功率は、平均15%程度です。
40代前半・後半で妊娠率の差が大きくなり、45歳を過ぎると10%以下に低下する傾向にあります。

40代になると採卵や胚移植の回数が増え、不妊治療も長期に及ぶケースがあります。

神奈川レディースクリニックの妊娠実績

2019年~2023年の
生殖補助医療ART成績

2019年2020年2021年2022年2023年
総採卵件数23912130232422211983
平均採卵個数7.997.677.366.87.8
総移植件数(新鮮+融解)28832668295630162574
妊娠件数(新鮮+融解)11351044121412181155
妊娠率(妊娠件数/移植件数)39.40%39.10%41.10%40.38%44.87%
妊娠件数内の内訳
新鮮胚移植
123(23.1%)69(19.1%)70(18.4%)94(23.4%)45(27.4%)
融解胚移植1012(43.1%)975(42.3%)1144(44.4%)1124(43.0%)1110(46.1%)
流産件数(流産件数/妊娠件数)263(23.2%)222(21.3%)290(23.9%)320(26.8%)276(23.9%)
分娩件数(分娩件数/移植件数)844(29.3%)771(27.5%)917(31.0%)875(29.0%)870(33.8%)

上の表は当院における、2019年〜2023年のART(体外受精・顕微授精)の成績を示しています。
直近2023年の総胚移植数(新鮮+融解)は2,574件で、そのうち1,155件が妊娠に至っています。年齢を問わない全体の妊娠率(妊娠件数/移植件数)は44.87%となりました。

新鮮胚移植の
臨床妊娠・出産・流産率

妊娠/移植分娩/移植流産/妊娠
29歳以下100.0%100.0%0.0%
30〜32歳50.0%40.0%20.0%
33〜35歳42.9%42.9%0.0%
36〜38歳32.6%27.9%14.3%
39〜41歳29.0%19.4%33.3%
42〜44歳11.9%9.5%0.0%
45歳以上0.0%0.0%0.0%
新鮮胚移植 臨床妊娠・出産・流産率グラフ

新鮮胚移植とは、採卵して体外で受精させた受精卵(胚)を凍結せず、採卵と同じ周期で胚を移植する方法のことです。

上記のグラフは、当院における2023年に新鮮胚移植を実施した方の年齢別の成績を示しています。胚移植1回あたりの妊娠率は、29歳以下は100%、30〜32歳で50%、33〜35歳で42.9%、36〜38歳で32.6%、39〜41歳で29%、42〜44歳で11.9%となっています。

ただし現在、凍結融解胚移植の割合(2410件)が増えていて新鮮胚移植の件数が少ないため(164件)やや極端な数値になっている点は留意が必要です。

凍結胚移植の
臨床妊娠・出産・流産率

妊娠/移植分娩/移植流産/妊娠
29歳以下68.8%54.8%20.3%
30〜32歳64.4%54.0%16.1%
33〜35歳55.5%43.9%19.0%
36〜38歳47.6%36.6%23.2%
39〜41歳41.9%27.9%32.6%
42〜44歳26.6%17.2%34.4%
45歳以上11.6%4.7%60.0%
凍結胚移植 臨床妊娠・出産・流産率グラフ

2023年度(2023年1月~2023年12月)までに実施した体外受精の妊娠・出産・流産率のデータです。(未報告件数を除いた出産件数となります。)

凍結胚移植とは、採卵して体外で受精させた受精卵(胚)を一旦凍結保存し、採卵と別の周期で移植する方法のことです。
移植の際は、凍結胚を融解してから移植します。新鮮胚移植よりも凍結胚移植の方が成功率が高いことがわかっています。

上記のグラフは、当院における2023年に凍結胚移植を実施した方の年齢別の成績を示しています。胚移植1回あたりの妊娠率は、29歳以下は68.8%、30〜32歳で64.4%、33〜35歳で55.5%、36〜38歳で47.6%、39〜41歳で41.9%、42〜44歳で26.6%、45歳以上で11.6%となっています。

体外受精の成功確率を高めるためにできること

ここまでご説明したように、年齢が成功確率に大きく影響するのは確かです。
しかし、年齢以外にも妊娠率を下げるとされる要因はいくつかあります。今からできることを考えてみましょう。

早めに不妊の原因を突き止める

まずは検査をして、不妊の原因を特定することが大切です。詳しい検査を受けることで婦人科系の疾患が見つかったり、卵巣機能が低下していたり、思いもよらない原因が隠れていることがあります。
早期治療に繋げるためにも、まずは不妊検査を早い段階で受けることをおすすめします。

自分に適した治療を行う

体外受精では、身体の状態や年齢に適した治療を行うことが重要であり、ひいてはそれが妊娠率を高めることに繋がります。

例えば、妊娠の確率を上げるための最初のステップとして卵巣刺激(排卵誘発)があります。卵巣刺激法には様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。
年齢や身体の状態によって適した治療法は違ってくるため、医師と十分に話し合い、自分の要望を伝えながら、最適な治療法を選ぶことが大切です。

不妊や妊娠について正しい知識を得る

不妊や妊娠の正しい知識を身に付けることで、今後の妊活や不妊治療もスムーズに進むでしょう。とはいえ、インターネットやSNSなどの情報をそのまま鵜呑みにするのはおすすめしません。中には間違った情報が紛れていることもあるからです。

情報収集の際は、なるべく医療機関が提供する情報や、担当医からの説明を参考にするようにしましょう。

適切な運動や睡眠、食生活を心掛ける

不妊治療では、妊娠しやすい身体づくりも重要です。適度な運動習慣を身に着け、睡眠時間もしっかり確保しましょう。

また、バランスの良い食事も大切です。特に葉酸やビタミンDなどの栄養素を積極的に取り入れ、規則正しい生活を心がけましょう。

喫煙やカフェインの過剰摂取をやめる

喫煙の習慣がある方は、妊活・不妊治療中の禁煙が必要です。
タバコは卵子の質低下の原因になり、流産リスクも上昇させるとされています。
治療期間中はもちろん、妊娠してからも禁煙を継続する必要があります。まずは治療を始める前に、男女ともに禁煙できるように努めましょう。
治療期間中は、カフェインが含まれる飲み物の過剰摂取も控えなければなりません。過度なカフェイン摂取は、胎児に悪影響を及ぼすリスクがあるからです。
そのため、不妊治療の段階からカフェイン摂取の量を控えたり、カフェインレス・ノンカフェインの飲み物に変えたりする工夫が必要です。

痩せすぎ・太りすぎなどを改善する

極端に痩せている場合、排卵障害や月経不順の原因となることがあります。過度なダイエットは避け、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。

一方で、太りすぎにも注意が必要です。妊娠中に高血圧や糖尿病を発症するリスクが高まるだけでなく、早産や難産の可能性も指摘されています。そのため、妊娠前に適切な体重に調整することが大切です。

身体を冷やさないようにする

身体の冷えは血流を滞らせ、卵巣や子宮の冷えにも繋がります。
なるべく冷たい飲み物は避け、温かい飲み物や食べ物を意識して摂るよう心がけましょう。

また、シャワーだけで済ませず、湯船に浸かる習慣を取り入れることも大切です。さらに、適度な運動を行うことで血流が改善し、身体を温める効果が期待できます。冷えを防ぐ生活習慣を心がけ、妊娠に適した身体づくりを目指しましょう。

監修医師紹介

神奈川レディースクリニック名誉理事

小林 淳一 医師

2003年に当クリニックを開設し、患者様の個々のペースに合わせた無理のない医療を行い、ゆったりと相談にのれる親しみやすい産婦人科医を目指してまいりました。開院から20年が経過し、医療技術の進歩・新しい機器の導入、また、2022年から不妊治療の保険診療導入など、かなりこの分野も変化しております。
長年の経験を活かし、患者様に寄り添う気持ちでさらに努力を続け、皆様のご期待に沿えるよう職員一同励んでまいります。
よろしくお願い申し上げます。

経歴

昭和56年慶応義塾大学医学部卒業 同年 産婦人科学教室入局
昭和57年総合太田病院
昭和58年静岡市立病院
昭和59年慶応義塾大学病院
昭和62年済生会神奈川県病院
平成9年新横浜母と子の病院 IVFセンター長・副院長
平成15年神奈川レディースクリニック 開院

資格・所属学会

  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 母体保護法 指定医
  • 日本生殖医学会
  • 日本受精着床学会
  • 日本卵子学会
  • 日本IVF学会