不妊治療にかかる費用は?
保険適用後の金額と適用範囲も解説 COST OF INFERTILITY TREATMENTS

不妊治療にはどのくらいお金がかかる?

不妊に悩むカップルは増加傾向にあり、厚生労働省によれば、夫婦全体の約4.4組に1組が不妊検査や治療を受けたことがあるといいます。さらに、不妊を心配したことがある夫婦は39.2%にのぼり、およそ2.6組に1組の割合であることも明らかになっています。つまり、多くの夫婦が将来的な妊娠に対して不安を抱えている現状がうかがえます。
参考:厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック

しかし、不妊治療は金銭的な負担が大きな壁になることもあります。「治療を受けたいけれど、費用がネックになり踏み出せない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
保険適用となった今、実際にどのくらいの費用がかかるのか解説します。

不妊治療の定義とステップ

不妊症とは、世界保健機関(WHO)や米国生殖医学会(ASRM)によって「1年以上の不妊期間を持つもの」と定義されています。ただし、女性の年齢や既往歴、また卵管閉塞や重度の男性因子不妊など明確な不妊の原因がある場合は、1年を待たずに早期に不妊治療を開始することが推奨されています。

不妊治療を始める前には、まず不妊検査をおこない、ホルモンバランスや卵管の通過性、精液検査などを通じて原因を特定します。これらの検査結果を踏まえ、患者さまの身体の状態や不妊の原因に合わせて最適な治療法が選択されます。

一般的な不妊治療のステップはタイミング法から始まり、次に人工授精(AIH)、そしてより高度な生殖補助医療(ART)である体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)へとステップアップしていきます。

一般不妊治療に分類されるタイミング法や人工授精の費用と比べると、生殖補助医療に分類される体外受精や顕微授精は費用が高い傾向にあります。また、検査をしたうえで、原因や身体の状態に合わせて適切な治療法が選択されるため、場合によっては体外受精からスタートするケースもあります。
このように、不妊治療にかかる費用は患者さまによって幅があることに注意が必要です。

2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大

これまで不妊治療は一部の治療や検査のみが保険の対象でしたが、2022年4月から適用範囲が拡大しました。現在、基本的な不妊治療は保険でカバーできるようになっており、窓口で支払う費用は3割負担と金銭的負担は以前よりも大きく軽減されています。ただし、適用には条件や回数制限が設けられています。ここでは、適用の対象となる不妊治療の概要やその条件について解説します。

保険が適用される不妊治療

2022年から保険適用となった対象の不妊治療は、タイミング法、人工授精、生殖補助医療(体外受精・顕微授精)です。それぞれ詳しく紹介します。

タイミング法(タイミング指導)

タイミング法は、医師が卵胞の大きさを確認しながら排卵日を予測し、夫婦生活をおこなうタイミングを指導する不妊治療です。
治療を開始する前に、血液検査や超音波検査などを実施します。

人工授精 (AIH)

人工授精は、採取した精子を子宮に直接注入し、妊娠を目指す不妊治療です。自然妊娠に近く、身体への負担や金銭的な負担が少ないのがメリットです。
人工授精の詳細はこちら>

生殖補助医療(ART)

生殖補助医療は、採卵・採精・培養・胚凍結保存・胚移植といった高度な技術を用いる不妊治療のことで、体外受精や顕微授精がこれに該当します。
具体的には、女性の卵巣から卵子を採取し、シャーレ上で精子と受精させます。その後、受精してできた受精卵(胚)を培養して成長させ、子宮に戻して妊娠を目指します。
生殖補助医療は身体的・金銭的な負担が大きくなる傾向ですが、高い妊娠率が期待できる方法です。

また、生殖補助医療のなかには「オプション治療」という妊娠率向上のために実施される、より高度な技術や特別な処置があります。
これらは従来、先進医療として位置づけられ、保険診療と併用して受けることが可能でした。先進医療とは、厚生労働省が認めた最新かつ安全性や有効性が一定基準を満たした医療技術のことです。
近年では、オプション治療の一部が保険適用となったほか、先進医療として保険診療と併用できるケースもあり、患者さまの経済的負担がさらに軽減されています。
生殖補助医療ARTの詳細はこちら>

以前から保険適用だった治療法・検査

下記のような不妊原因を調べる検査や手術は、以前から保険適用の対象です。

不妊原因を調べる検査

  • 内診・経腟超音波検査:内診と超音波で、子宮や卵巣に異常がないか、排卵のタイミングは適切かなどを調べる
  • 血中ホルモン検査:血液検査で女性は、女性ホルモンや卵巣刺激ホルモンに、男性は、男性ホルモンや性腺刺激ホルモンに問題がないかを確認する
  • 子宮卵管造影:造影剤を使い、子宮の形や卵管の通過性に問題がないかを調べる
  • 精液検査:精子の数や運動率などを調べ、男性不妊の原因を探る
  • フーナーテスト:夫婦生活後の子宮頸管粘液を採取し、精子の数や運動状態を調べる

不妊原因となる疾患の手術・薬物療法

  • 男性側:精管閉塞・形態異常・精巣機能障害・逆行性射精などの治療
  • 女性側:子宮奇形・感染症・子宮内膜症(骨盤内癒着)・卵管閉塞・卵管狭窄・子宮筋腫・排卵障害などの治療

不妊治療の保険適用の条件

一般不妊治療のタイミング法と人工授精に、条件は設けられていません。生殖補助医療の体外受精・顕微授精は、下記のような年齢・回数の条件が設けられています。

年齢制限

治療開始の時点で女性の年齢が43歳未満
※男性の年齢制限はなし

ただし、治療開始時に42歳であった女性が治療の途中で43歳になった場合でも、その周期の胚移植までは引き続き保険診療が適用されます。

回数制限

治療開始時点の女性の年齢回数の上限
40歳未満通算6回まで(1子ごと)
40歳以上43歳未満通算3回まで(1子ごと)

体外受精には、採卵・受精・培養・胚移植といったプロセスがありますが、胚移植を実施した回数を1カウントとして数えます。つまり、採卵の回数は関係ありません。

なお、1子ごとの回数制限のため、出産後はリセットされます。

婚姻関係の確認

不妊治療の保険適用には、法的な婚姻関係または事実婚であることが条件となっています。
保険診療・自費診療に関わらず、医療機関での確認が義務付けられており、住民票や戸籍謄本(抄本)などの書類が必要です。
確認方法については、《婚姻確認についてのお知らせ》をお読みください。

特定不妊治療費助成制度の終了とその影響

2022年4月からの保険適用拡大以前は「特定不妊治療費助成制度」という、体外受精や顕微授精などの高額な治療費を助成する制度がありました。この制度は、治療内容や所得に応じて助成金が支給され、治療を受ける夫婦の経済的な負担を軽減していました。

しかし、保険適用が開始されたことにともない、この制度は廃止されました。これにより、以前は助成制度の対象であった一部の先進医療やオプション治療などについては、現在は自己負担となるケースが出ています。結果として、治療内容によっては保険適用後も実質的な費用負担が増えてしまうという課題も生じています。

ただし自治体によっては、独自の助成制度を設けているところもありますので、お住まいの自治体について調べてみるとよいでしょう。

不妊治療にかかる費用の目安【保険診療と自費診療の費用比較】

不妊治療の費用は、治療方法や患者さまの状況によって異なります。また、保険診療か自費診療かによっても、大きく費用に幅があります。

ここでは、当院の費用を例に、各治療ごとのおおよその費用をご紹介します。

検査にかかる費用

まず不妊治療の前に検査を実施し、不妊原因を特定します。初診から次の排卵時期までにおこなう検査費用は、下記が目安となります。

保険診療自費診療
初診料880円3,300円
再診料390円
(月により400円)
770円
検査費用
(超音波検査などを含む約17項目の検査)
約16,660円約80,650円
一般不妊治療管理料750円-
合計約18,680円約84,720

検査結果によって、適切な不妊治療の選択や治療計画が立てられます。

一般不妊治療にかかる費用

人工授精(AIH)

人工授精のおおよその費用は、下記が目安となります。

保険診療自費診療
人工授精(当日)5,460円18,050円

上記の他、診察代・再診料・超音波検査代・注射代・お薬代などの費用が別途かかります

生殖補助医療(ART)にかかる費用

体外受精(IVF)

体外受精の場合、採取した卵子の個数によって費用が上下します。
ここでは6〜9個の卵子を受精・培養し、2〜5個の胚を凍結保存するモデルケースの費用をご紹介します。

採卵〜胚凍結

保険診療自費診療
採卵(6〜9個)26,100円128,700円
受精(個数に関わらず)9,600円-
受精卵培養(6〜9個))25,200円67,100円
胚盤胞加算(2〜5個)6,000円26,400円
凍結胚保存(2〜5個)21,000円44,000円

胚移植

保険診療自費診療
凍結融解胚移植36,000円92,400円
アシステッドハッチング3,000円11,000円
高濃度ヒアルロン酸含有培養液3,000円11,000円

保険診療の場合の合計:約129,900円
自費診療の場合の合計:約380,600円

なお、上記のモデルケースには、注射・薬代、診察代、管理料などは含まれていません。注射の種類や量、薬剤によっても費用に個人差があるため、あくまで目安としてご参考ください。

顕微授精(ICSI)

顕微授精の場合、体外受精よりも高い受精率が期待できますが、その分費用も高くなる傾向があります。体外受精と同様のモデルケースでは、下記表内の赤字部分の料金が変更され、それにともない総費用も変わります。

採卵〜胚凍結

保険診療自費診療
採卵(6〜9個)26,100円10,670円
(麻酔代別途)
顕微受精(6〜9個)27,000円33,000円
受精卵培養(6〜9個))25,200円67,100円
胚盤胞加算(2〜5個)6,000円26,400円
凍結胚保存(2〜5個)21,000円44,000~66,000円

胚移植

保険診療自費診療
凍結融解胚移植36,000円92,400円
アシステッドハッチング3,000円11,000円
高濃度ヒアルロン酸含有培養液3,000円11,000円

保険診療の場合の合計:約147,300円
自費診療の場合の合計:約413,600円

保険診療の顕微授精の場合、1周期あたり15〜21万円程度が目安といえます。

体外受精や顕微授精の費用負担は大きいですが、高額療養費制度があるため、月にかかる実際の負担額は大きく抑えられます。
高額療養費制度については後述します。

卵子凍結にかかる費用

卵子凍結は、パートナーがいない、仕事に専念したいなど、さまざまな理由で子どもを現在望めない方が将来の妊娠に備える選択肢のひとつです。

この方法では、採卵して得られた卵子を凍結保存しておき、将来妊娠を望むタイミングでパートナーの精子と受精させることで妊娠を目指します。

なお、卵子凍結は保険適用の対象外となり自費診療です。
当院では、下記の費用がかかります。

項目費用
初期費用
(診察費・超音波検査代・血液検査代)
13,200円~35,500円
卵子凍結パック
(採卵までの診察費・ホルモン検査代・
超音波検査代・薬剤費・採卵費)
低刺激卵子凍結パック275,000円
(2回目以降は 220,000円)
高刺激卵子凍結パック330,000円
(2回目以降は 275,000円)
最初の1年間の保険費用(凍結代含む)11,000円
2年目以降の凍結保管更新費10個まで44,000円
11個から66,000円

保険診療の場合の合計:約147,300円
自費診療の場合の合計:約413,600円

妊娠・出産までにかかる費用

妊娠・出産は病気ではないため、保険の適用外となっています。
主に下記のような費用がかかります。

  • 妊婦健診費用:10万円程度
  • 入院・出産費用:30〜70万円程度(正常分娩の場合)

出産までの妊婦健診は、一般的に14回ほどあります。1回あたり約5,000円で、合計10万円程度かかるといわれています。
また出産時は、正常な分娩でも30〜70万円程度かかります。さらに赤ちゃんのためのベビー用品や妊娠中のマタニティ用品の費用を含めると、出産までトータル100万円ほどかかる場合もあるといいます。

ただし、妊婦健診の助成や出産育児一時金などの支援が受けられるため、これらの制度を利用することで費用は抑えられるでしょう。

不妊治療を保険適用で受けるメリット

窓口負担が軽減される

不妊治療が保険適用となることで、医療費の窓口での自己負担が原則3割となるため、治療にかかる経済的負担は大きく軽減されます。これまで費用がネックで治療に踏み出せなかった方にとって、治療を開始しやすくなる大きなメリットとなっています。

高額療養費制度を利用できる

高額療養費制度とは、医療機関や薬局で支払った1ヵ月あたりの医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じて定められた上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
不妊治療においては、2022年4月の保険適用拡大以前は、人工授精や体外受精といった高度な治療は全額自己負担であり高額療養費制度の対象外でした。しかし、保険適用となった今、これらの治療も同制度の対象となっているため経済的な負担をさらに軽減できます。

費用が一律化される

保険適用前の不妊治療は自費診療であったため、施設ごとに自由に料金が設定されており、治療費に大きな差が生じていました。そのため、同じ治療内容でも費用が高額になるケースがあり、患者さまにとっては比較検討が困難でした。
しかし、保険適用により治療費の料金体系が国によって定められ、一律化されるようになりました。これにより、費用面での不安や不公平感が解消され、患者さまが安心して治療を選択しやすくなっています。

不妊治療の費用負担を軽減するために利用できる制度

高額療養費制度

高額療養費制度は、保険診療の費用負担が月の上限額を超えた場合に、超過分の金額を支給する制度です。月の上限額は年収によって異なり、不妊治療の場合は女性側の年収で決まります。

所得水準に応じて下記のように、1ヵ月の上限額が変わります。

年収(69歳以下)1ヵ月の上限額
年収約1,160万円〜252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約370〜約770万円80,100円+(医療費-267,000)×1%
〜年収約370万円57,600円
住民税非課税者35,400円

負担額が高額になった場合も、年収に応じて上限額以上の費用はかからなくなります。
なお、現在はマイナンバーカードを健康保険証として使用することで、事前の役所での手続きが不要になっています。窓口で限度額以上の支払いは不要となり、一時的に高額な医療費を負担する必要もありません。

民間の医療保険

不妊治療が保険適用となったことで、人工授精や生殖補助医療が保険の手術給付金の対象になります。

また、医療保険によっては「先進医療特約」が付帯されている場合もあります。当院では先進医療として、下記をおこなっております。

  • タイムラプス(全例実施)
  • 子宮内膜刺激胚移植法(SEET法)
  • 二段階胚移植法
  • 子宮内膜受容能検査(ERA検査)
  • 子宮内細菌叢検査(EMMA・ALICE検査査)
  • 子宮内細菌叢検査2(フローラ検査)
  • 子宮内膜スクラッチ
  • 強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別(IMSI)
  • ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)
  • 膜構造を用いた生理学的精子選択術(Zymōt)
  • 子宮内膜受容能検査2(ERPeak℠)
  • β2GPIネオセルフ抗体検査

各自治体の助成金制度

先進医療や保険適用外の治療に対し、各都道府県や市が独自の助成金制度を設けています。基本的には、費用を負担したあとに申請することで助成金が受け取れます。

条件や助成金額は、市町村によって対象となる治療、上限額、条件などが異なるため、お住いの自治体のホームページなどで確認する必要があります。
高額療養費制度・医療保険・助成金は併用が可能であり、これらを利用することで不妊治療の費用負担を軽減できるでしょう。

不妊治療の保険適用に関するよくある質問

  • 助成金を利用していた場合も保険適用になる?過去に助成金を利用して不妊治療をしていた場合も、保険適用となります。助成金の支給回数はカウントされません。
  • 保険適用前の治療も、保険診療として継続可能?保険適用前からおこなっていた治療も、保険診療として継続できます。保険適用以前に凍結した胚も、指定の医療機関や登録施設で作成されたものであれば基本的に使用可能です。

監修医師紹介

山本 篤 医師

神奈川レディースクリニック理事長 兼 院長

山本 篤 医師

神奈川レディースクリニックは、2003年の開院以来「無理のない医療」を大切に、患者様に寄り添ってまいりました。私もその理念を受け継ぎつつ、新しい医療の可能性を取り入れ、ご夫婦の未来を支える医療を実践していきたいと考えています。
妊活や不妊治療は目に見えない体の変化に向き合うため、不安を感じることも少なくありません。私は体の中で起きていることや今後の見通しを丁寧にお伝えし、納得感を持って治療に臨んでいただけるよう心がけています。
経験と最新の知見を融合させ、安心できる場で最先端の治療を提供してまいります。どうぞ安心してご相談ください。

経歴

東京大学薬学部薬学科卒
平成17年東京医科歯科大学(現、東京科学大学)卒業
平成17年~19年・27年~29年東京医科歯科大学附属病院周産女性診療科
平成19年~22年・29年~令和2年獨協医科大学付属埼玉医療センター
産婦人科・リプロダクションセンター  講師
平成22年国立成育医療研究センター 不妊診療科
平成22年~27年国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所
東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野 :医学博士学位取得
令和2年~六本木レディースクリニック 神奈川レディースクリニック 勤務
令和7年神奈川レディースクリニック院長就任

資格・所属学会

  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 日本産科婦人科学会 指導医
  • 日本生殖医学会 専門医
  • 日本生殖医学会 指導医
  • 日本性科学会 理事
  • 日本性科学会認定 セックスカウンセラー
  • 日本受精着床学会
  • 日本人類遺伝学会
  • 日本がん・生殖医療学会
  • 日本生殖心理学会
  • 日本生殖医療支援システム研究会
  • 早稲田大学非常勤講師
  • Wellness AP Science 株式会社 医療顧問

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