不育症(習慣流産)・着床不全RECURRENT PREGNANCY LOSS

流産を繰り返さず、出産へと導くために。

当クリニックの大きな特徴が、不妊から不育までを一貫して行う治療体制です。
妊娠だけではなく、確かに育っていくのを見届けてこそ、患者様のためだと考えています。
そして、患者様の体調や状況、ご希望を最優先し、ひとり一人に最適な治療を提供するのが、KLCの姿勢です。
不育症は不妊症に比べて情報が少ないために不安も大きいと思いますが、疑問や悩みを気軽に打ち明けられる個別相談もありますので、納得と安心の元に治療を進めていただけます。

不育症(習慣流産)とは?

妊娠した喜びもつかの間、自然流産を繰り返し、なかなか出産までたどり着けない場合を「不育症」といいます。
その中でも妊娠 22 週未満で 3 回以上流産を繰り返す場合を「習慣流産」と呼びます。
流産には避けられない流産もあり、初期流産の原因の60〜70%は胎児の染色体異常によるものとされています。
「不育症」の原因はさまざまで、それを検査し、避けることが可能な流産には、流産を防ぐための治療や精神的サポートを行っていきます。

不育症(習慣流産)の検査

当クリニックでは、22週までの流産を2回以上繰り返すカップルを対象に、原因を特定する各種検査を行っています。
原因で最も頻度の高いものは、胎児の染色体異常です。
それ以外の原因には、抗リン脂質抗体、血液凝固系異常、子宮形態異常、甲状腺機能異常、夫婦染色体異常などがあり、検査をしても明らかな異常が判らない方もいます。

着床不全とは?

着床不全とは、体外受精において、形態学的・機能的に良好な胚を複数回移植しても妊娠が成立しない状態をいいます。
着床不全の原因は、胚側と子宮側のどちらかに存在し様々な原因があります。次の体外受精の成功へと導くために、それぞれの患者様の状況に応じて適切な検査・治療を行っていきます。

主な検査の概要と治療

子宮卵管造影検査

子宮の入り口から細い管を挿入し、子宮内に造影剤を注入してレントゲン撮影を行う検査です。
子宮の形、大きさ、卵管の通り具合を調べるのと同時に、卵管の通過性が改善され、妊娠率が向上するといわれています。

子宮鏡検査(ヒステロスコープ)

子宮の入り口から内視鏡(カメラ)を挿入し、子宮内膜ポリープ・粘膜下子宮筋腫・双角子宮などの形態異常や慢性子宮内膜炎の有無等を確認します。
超音波検査で子宮内ポリープ・子宮内癒着・子宮奇形が疑われる場合や不妊症の原因が不明な場合に行われます。

子宮内膜炎・内膜ポリープが
疑われる場合

子宮内膜炎が疑われる場合は、抗生剤の内服を行います。
子宮内膜ポリープに対しては、全身麻酔下で内膜ポリープ切除術を行います。
当院では、子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術として硬性子宮鏡モルセレーションシステムTruClearTM を導入し数多くの手術を行っています。

TruClearTM 硬性子宮鏡
モルセレーションシステム
(子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術)

電気エネルギーを使用せずにポリープや筋腫を切除することができる硬性子宮鏡です。
この装置はシェーバーと呼ばれる細い棒の先に開いた穴にポリープを吸い込みながら電気メスを使用せずに切開するという特徴があります。
電気メスを使用しないため、子宮内膜へのダメージを最小限にできます。

※多発性のポリープや大きなポリープの方は適応ではない場合があります。事前に子宮鏡検査等で判断し、ご案内させていただきます。

TruClearTM 硬性子宮鏡モルセレーションシステム
内視鏡手術システムの図

甲状腺検査(TSH・fT3・fT4)

甲状腺機能異常があると不妊・流産のリスクが高くなります。
甲状腺.内分泌系内科に受診していただき必要に応じて内服治療等の管理をお願いしています。
当院で内服薬をお出しすることもあります。

糖尿病検査
(空腹時血糖・HbA1c・インスリン)

糖の代謝異常があると卵胞の発育不良や卵子の質の低下などにより不妊をきたす原因になります。
また、流産のリスクも高くなります。
異常のある場合、糖尿病内科を受診して頂きます。
軽度(インスリン抵抗性がある)の場合は、「メトホルミン」という薬を当院で処方し内服して頂きます。

抗リン脂質抗体
(APLパネル・ループスアンチコアグラント他)

自己免疫の一つである抗リン脂質抗体の作用により、胎盤に血栓を生じ、流産の原因となります。

ネオセルフ抗体検査について

β2GPIネオセルフ抗体検査は不育症・不妊症の原因の1つとして近年新たに発見された抗体です。この抗体は血管の炎症を引き起こすことにより血栓ができやすくなり、不育症・不妊症の原因となると考えられています。

検査陽性の方は、 β2GPIネオセルフ抗体によって血栓が生じやすく、妊娠しにくい・流産が起きやすい状態と考えられるため、血栓を予防する治療を行います。適切に治療を行うことで妊娠成功率、生児獲得率がどちらも増加する研究結果が報告されています。

ネオセルフ抗体

β2GPIネオセルフ抗体検査は不育症を対象にした先進医療Aと認定されています。
また、国や各自治体の不育症検査費用助成事業によって助成金が受けられます。

血液凝固異常
(第XII凝固因子・プロテインS・プロテインC)

生まれつき血液が凝固しやすい体質があると、胎盤に血栓を生じ、流産の原因となります。
低用量アスピリン療法「バイアスピリン」などの薬を1日1回程度高温期中期頃から妊娠12週(もしくは35週)位まで内服して頂きます。

子宮内膜受容能検査〔ERA〕

子宮内膜には胚の着床に適した時期 (着床の窓) があります。子宮内膜に受精卵が着床できる時間や時期には 個人差があり、窓を特定することで最適なタイミングで胚移植を実現出来ます。
ERAの結果に合わせて、胚移植の準備・調整を行い、最適な時期に胚移植を行います。

ERA検査の概要

ホルモン補充周期の場合は、エストロゲン投与により一定の厚さに子宮内膜を肥厚させ、その後、プロゲステロン投与開始後6 日目(120 時間目)で子宮内膜採取を行います。自然採卵周期の場合はLHサージ後7 日目またはhCG 投与後の6 日目に採取します。

採取した子宮内膜を検体とし、次世代シークエンサーをもちいて236 遺伝子を網羅的に解析し、内膜組織がReceptive(受容期)かNon-receptive(非受容期)かを評価します。
また、Non-receptive の際はどのくらいReceptive までに差があるかも評価を行います。
子宮内膜が着床を受容する期間に周期を同期させ、胚移植を行うことで着床率の向上を目指します。

子宮内膜胚受容期検査〔ERPeak〕

ERA検査より新しい検査方法で、子宮内膜が胚を受け入れる時期(着床の窓)を調べる遺伝子検査です。
関連するホルモン応答遺伝子の発現量を調べることで最適な時期に胚移植を行い、妊娠率を高めます。

ERPeak℠検査の概要

通常診療として実施されるホルモン補充による凍結融解胚移植のプロトコール通りに内膜環境を整え、黄体ホルモン補充開始日をP+0 とすると、着床の窓の期間に発現するReceptive 遺伝子があるとされるP+5 に内膜採取を行います。

ERPeak℠の結果判定は、pre-receptive( 受容期前) 、receptive(受容期)、post-receptive(受容期後)、non-receptive(非受容期)の4 段階評価であり、そのERPeak℠ 解析結果をもとに、次周期以降に着床の窓に合わせた胚移植を施行します。

子宮内細菌叢検査
〔EMMA・子宮内フローラ検査〕

子宮内に存在する様々な菌のバランスの乱れが受精卵の着床障害や流産の原因の1つと考えられるようになってきました。特に子宮内膜の乳酸菌の割合が少ないと免疫抑制できず受精や着床を妨げ妊娠・着床率に大きく影響があると考えられています。
子宮内膜の組織を採取し子宮内の細菌のDNA配列を解析する事で子宮内膜中の乳酸菌・細菌の種類と量を測定しバランスが正常かどうかを調べます。

子宮内の乳酸菌が増えるような試みが行われています。

  • ラクトフェリンの内服
  • 乳酸菌製剤,ビフィズス菌製剤の内服、膣内投与

また、病原菌に対して効果のある抗生物質を内服します。

感染性慢性子宮内膜炎検査
〔ALICE・CD138検査〕

慢性子宮内膜炎とは子宮内膜の深い基底層にまで細菌・ウイルスが侵入し持続的に炎症が起きている状態です。ほとんどの場合自覚症状がなく不妊症・不育症の原因の一つとされています。
感染が持続すると免疫活動が活発化、子宮内膜の免疫異常や脱落膜障害を起こし受精卵を異物として攻撃してしまう可能性が指摘されています。
検出された病原菌に対し、効果のある抗生物質を内服します。

同種免疫異常の検査〔NK細胞活性〕

NK細胞活性が活発な場合、胎児を異物と認識し攻撃してしまうことで、流産の原因となる説があります。
ビタミンD(3000IU/日)の服用をお勧めしています。NK 細胞を制御する効果があります。

同種免疫異常の検査
〔Th1/Th2細胞〕

Th1とTh2は互いに抑制しあい、胎児を受け入れるための免疫の調整を行っています。
Th1/Th2の比率が低い方が妊娠の維持に有利と言われています。Th1の比率が大きいと受精卵を異物だと認識し、攻撃することで着床を阻害すると考えられています。
タクロリムスの内服(免疫調整薬の一種):Th1/Th2比が高い場合は「タクロリムス」を内服します。
免疫を調整し、受精卵や胎児への攻撃の手を緩めさせる作用があります。
Th2 の低い方に「プレドニン」内服薬を処方する場合があります。

その他着床不全の治療

リンス法

子宮内膜を刺激して着床を促進するために胚移植の前に行います。
※詳細な機序はわかってないのですが、少しでも可能性が上がると考えています。

適応...子宮内膜の薄い方、反復不成功の方など。

  • KLC リンス法
  • 通気リンス法
  • G-CSFリンス法… 通常のエストロゲン製剤で子宮内膜が厚くなりにくい方に、この製剤を投与することで、内膜の環境が改善され、妊娠率が向上したという報告があります。
    G-CSF製剤とは、サイトカインの一種で、国内では主に化学療法による好中球減少症の方に用いられています。血中半減期が5~6時間と早く、移植2~7日前に用いられますので胚への影響はないと考えられています。
    また、副作用や児への影響は報告されていません。
  • SEET 法… 受精卵を培養した培養液を凍結保存し子宮内に注入します。
    この培養液には、受精卵が発生する過程で排出した子宮内膜受容能促進に関する物質が存在すると考えられています。
    (保険診療の場合も先進医療として自費価格となります)

内膜スクラッチ

胚移植の前に子宮内膜に人工的に小さい傷をつける方法です。
傷をつけると、内膜の修復過程でサイトカインや成長因子などが分泌され、傷を修復します。
胚が着床する環境でも同様の因子が分泌され、着床の促進に効果があると言われています。
(保険診療の場合も先進医療として自費価格となります)

PDF‐FD療法について

【PDF療法/PDF-FDとは】

PDF療法/PDF-FDとは、患者様ご自身の血液から抽出・濃縮した成長因子を子宮や卵巣に注入し、子宮内環境を改善して着床率を高める不妊治療です。不妊治療のほか、整形外科や皮膚科など、様々な分野で適用されています。PDF-FDは、血小板の力を活用した再生医療の一種で血小板に含まれる成長因子が、細胞の成長や免疫に関わることで、子宮内膜の厚さを増したり、卵巣の機能改善・卵子の質の向上に期待が寄せられています。しかし、保険適用外の自由診療であり、効果には個人差があるため、担当医とよく相談することが重要です。

特徴

血小板由来成長因子濃縮液をフリーズドライ(凍結乾燥)させたもので、血小板由来成長因子濃縮液に含まれる成長因子の量がPRP(多血小板血漿)に比べて多く含まれています。

子宮内環境の改善(子宮内膜注入)

子宮内に成長因子を注入することで、子宮内膜の厚さを増し、受精卵の着床しやすい環境を作ることを目指します。

卵巣機能・卵子の質の向上(卵巣注入)

卵巣に注入することで卵胞の成長を促し、卵巣機能が低下している方でも発育卵胞数を増加させることで、体外受精における採卵数を増やすことが期待されます。
卵胞周囲の血管新生を促進し、卵子の質向上につながる可能性も指摘されています。

【注意点】

  • 自由診療

    PDF-FD療法は保険適用外の自由診療となるため、治療費は全額自己負担となります。

  • 効果の個人差

    全ての人に治療効果が確実に出るわけではありません。
    また、血液の状態によって、ごく稀に加工が出来ないことがあり、その場合は再度採血が必要になったりあるいは治療を中止することもあります。

PDF-FD療法の流れ

  1. 採血

    採血をします。(予約制)

    採血
  2. 加工

    提携加工センターに輸送し、PDF-FDの製造及びフリーズドライ加工をします。

    ※約3週間ほど要します。

    加工
  3. 注入

    PDF-FDを子宮内膜または卵巣に注入します。

    胚移植周期や採卵周期等の治療のスケジュールに合わせて日程を決めます。

費用

※表示金額は全て税込

検査項目PDF-FD作製費その他費用
子宮内膜注入95,000円
(感染症検査代 12,100円を含む)
注入時の材料費・手技料 \ 5,500円
卵巣注入95,000円
(感染症検査代 12,100円を含む)
注入時の麻酔・材料費・手技料 \ 16,500円

※エコー・再診料は別途発生

※PDF-FD作製費は、採血日に全額お支払いただきますが、万が一 感染症等で血液の加工ができなくなり、治療がキャンセルされた場合は、後日 感染症検査代を除いた金額を返金させて頂きます。

監修医師紹介

山本 篤 医師

神奈川レディースクリニック理事長 兼 院長

山本 篤 医師

神奈川レディースクリニックは、2003年の開院以来「無理のない医療」を大切に、患者様に寄り添ってまいりました。私もその理念を受け継ぎつつ、新しい医療の可能性を取り入れ、ご夫婦の未来を支える医療を実践していきたいと考えています。
妊活や不妊治療は目に見えない体の変化に向き合うため、不安を感じることも少なくありません。私は体の中で起きていることや今後の見通しを丁寧にお伝えし、納得感を持って治療に臨んでいただけるよう心がけています。
経験と最新の知見を融合させ、安心できる場で最先端の治療を提供してまいります。どうぞ安心してご相談ください。

経歴

東京大学薬学部薬学科卒
平成17年東京医科歯科大学(現、東京科学大学)卒業
平成17年~19年・27年~29年東京医科歯科大学附属病院周産女性診療科
平成19年~22年・29年~令和2年獨協医科大学付属埼玉医療センター
産婦人科・リプロダクションセンター  講師
平成22年国立成育医療研究センター 不妊診療科
平成22年~27年国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所
東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野 :医学博士学位取得
令和2年~六本木レディースクリニック 神奈川レディースクリニック 勤務
令和7年神奈川レディースクリニック院長就任

資格・所属学会

  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 日本産科婦人科学会 指導医
  • 日本生殖医学会 専門医
  • 日本生殖医学会 指導医
  • 日本性科学会 理事
  • 日本性科学会認定 セックスカウンセラー
  • 日本受精着床学会
  • 日本人類遺伝学会
  • 日本がん・生殖医療学会
  • 日本生殖心理学会
  • 日本生殖医療支援システム研究会
  • 早稲田大学非常勤講師
  • Wellness AP Science 株式会社 医療顧問

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