生殖補助医療ART(体外受精・顕微授精・胚移植)

神奈川レディースクリニックの生殖補助医療(ART)

KLC(神奈川レディースクリニック)は、患者さまの体調や状況、そしてご希望を尊重し、
一人ひとりに最適な不妊・不育治療をおこなうクリニックです。生殖補助医療についても、この姿勢は変わりません。
高度な技術や複雑な治療を要する生殖補助医療では、患者さまの身体的・精神的な負担が大きくなりがちですが、
KLCでは治療の各場面で適確なサポートを心がけています。
治療の過程で生まれるさまざまな疑問や悩みを気軽に打ち明けられる個別相談もありますので、
必要に応じてご活用ください。

生殖補助医療(ART)とは?

生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)とは、卵子や精子、または受精卵(胚)を体外で取り扱い、妊娠を成立させる不妊治療の総称です。自然妊娠が難しい場合に用いられ、体外受精や顕微授精、胚移植などの治療法を組み合わせておこなわれます。

生殖補助医療(ART)の種類

体外受精(IVF)

体外受精(IVF)とは、体外に女性の卵子を取り出し、パートナーの精子と一緒にして受精させ、
できた受精卵を子宮に戻して着床を促す治療です。

卵子を取り出すことは「採卵」、受精卵(胚)を子宮に戻すことは「胚移植」と呼ばれます。
体外受精や顕微授精は、これらの高度な技術が求められる「生殖補助医療(ART)」に分類される不妊治療です。

妊娠までのプロセスは複雑で、不妊原因を特定するのは簡単ではありません。体外受精は、可能な限り不妊のリスク因子を回避しながら妊娠を目指すことができます。

体外受精が検討されるのは、一般不妊治療からのステップアップや、体外受精でしか妊娠できないと判断された場合になります。

また、体外受精の妊娠率は、1回あたり全年齢の平均で、約40%程度とされています。回数を重ねるごとに妊娠率は増加傾向にあり、34歳未満であれば約80%の割合で胚移植3回目までに妊娠するといいます。40歳未満の場合は、約75%の割合で胚移植4回目までに妊娠にいたるとされています。

年齢が上がるにつれて妊娠率は低下する傾向にあり、特に35歳を境に顕著な低下がみられます。

顕微授精(ICSI)

顕微授精(ICSI)とは、顕微鏡下で1個の精子を捕まえて、直接卵子の細胞質内に注入し、受精を促す方法です。

男性不妊症の原因である精子の数の減少や運動率の低下、または過去に体外受精で受精が成立しなかった場合に適応されます。精液のなかから動きのよい精子を選ぶことで、受精率を大幅に向上させることが可能です。

体外受精の正常受精率が約65~70%であるのに対し、顕微授精では80%以上と、より受精率が高く安定しています。

参考:日本産科婦人科学会雑誌第75巻第9号令和4年度臨床倫理監理委員会 登録・調査小委員会報告

生殖補助医療の流れ

基礎体温と生殖補助医療の
大まかな流れ

卵巣刺激(排卵誘発)

妊娠の確率を上げるために必要な最初のステップです。
より多くの卵子を十分に成熟させて採卵するため、ホルモン薬(飲み薬と注射)で排卵をコントロールしながらおこないます。
ホルモン薬の種類や投与方法などによってさまざまな方法があり、個々の卵巣の状態や患者さまの希望に合わせて決定していきます。
詳しい内容ついては、こちらをご確認ください。

卵巣刺激の方法と特徴

概要メリットデメリット
クロミッド法
自然周期法
卵巣刺激の注射を使用しない 自然周期での採卵、またはクロミッドの内服のみを使用費用が安く、
副作用が少ない
・採卵1回あたりに得られる卵子数が少なく、妊娠率が低い。
・採卵・移植のキャンセル率が高い。
アンタゴニスト法月経周期2~3日目からFSH/hMG製剤を注射(またはクロミッドを併用)
卵胞径12~18㎜になったらGnRHアンタゴニスト製剤を使用し、採卵時期を調整する。
注射の回数が比較的少ないため身体的・経済的負担が少ない。採卵1回あたりに得られる卵子数が比較的少ない。
PPOS法月経周期1~3日目から黄体ホルモン剤(クロミッドまたはフェマーラ)と FSH/hMG製剤を併用しLHサージを抑える方法
新鮮胚移植はせずすべて凍結
・卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の頻度が低くなる
・アンタゴニスト法と異なり注射の時間に制約がない
人によっては、卵巣刺激の注射の量や日数が増える場合がある
アゴニスト法
(ロング法・ショート法)
採卵周期前または月経開始から点鼻薬(GnRH アゴニスト製剤)を開始し、月経3日目から7~10日間ほど連日FSH/hMG製剤の注射をし複数の卵胞を育てる・1回の採卵で得られる卵子の数が最も多い
・得られる卵の数が多いため、質の良い卵子を選別しやすくなり妊娠率が上がる
・使用する薬剤が多いため費用が最も高い
・卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こる可能性がある

当クリニックでは、患者さまのご希望と年齢や体質的な適・不適合などによって、卵巣刺激の方法をご提案しています。

採卵・採精

成熟した卵子を排卵日の直前に体外に取り出します。この採卵と同じ日に採精もおこない、受精の準備を整えます。

採卵日決定 〜 採卵・採精
までのスケジュール

採卵日決定 〜 採卵・採精までのスケジュール
詳しい内容についてはこちらをご確認ください。

受精

採卵した卵子を培養液のなかで確認し、採精した精子は運動性の高い精子のみを取り出し、卵子と精子を一緒にして受精させます。
体外受精での受精方法は、下記の2通りがあります。

体外受精:コンベンショナルIVF(conventional IVF)

シャーレ上で卵子と精子を出会わせる方法。精子が自ら卵子に侵入することで受精が起こります。

顕微授精:ICSI

顕微鏡下で、細いガラス管を用いて精子を卵子に注入し受精させる方法。
精液所見が不良な男性不妊症や体外受精では受精卵を得られない場合におこないます。
顕微鏡下で精子を高倍で観察し、形態を確認後顕微授精に用います。
また、当クリニックでは紡錘体(Spindle)を観察することができる機器を導入してより安全で確実な顕微授精を目指しています。

生殖補助医療に関わる先進医療について

PICSI(Physiologic intracytoplasmic sperm injection:ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)

PICSIとは顕微授精の際にヒアルロン酸を含む培地を用いて、成熟精子の選択をおこなう技術です。 DNA損傷の少ない成熟している精子はヒアルロン酸に結合できるという特徴があります。
この特徴を利用してヒアルロン酸に接着した形態良好な精子を選択して顕微授精に使用します。 これによって、異数性胚の割合が低下し、流産率の低下が期待されます。
保険診療と併用される場合、顕微授精後に反復流産や着床不全がみられた方のみが対象となります。

※精液の状態によってはPICSIがおこなえない場合があります。その際、当技術 の費用は発生しません。
※PICSIをご希望された患者さまに対しても、顕微授精の費用は別途発生いたします。

Zymōt(膜構造を用いた生理学的精子選択術)

Zymōtスパームセパレーター(以下、Zymōt)を用い、特殊な膜構造により良好な精子を選別します。 従来法よりも遠心分離の回数を減らすことで、精子DNAの物理的損傷を軽減できるといわれています。
体外受精(顕微授精)の際にZymōtで回収した精子を使用することで、培養成績や妊娠率の向上、流産率の低下が期待されます。
保険診療と併用される場合、反復して着床や妊娠にいたっていない方のみが対象 となります。

※精液の状態によってはZymōtが使用できない場合があります。その際、当技術の費用は発生しません。
※Zymōtを使用して精子が回収できなかった場合、従来の処理方法で精子調整をおこなわせていただきます。その際、当技術の費用は発生します。
※本技術では使用する精液量が少ないため、従来の方法よりも回収できる精子数が少なくなる可能性があります。したがって、過去に体外受精をおこなっていた方が顕微授精の適応になる場合があります。

Zymōtの流れ

胚培養・胚凍結

体外受精・顕微授精、各受精法で得られた受精卵は、専用の培養液で培養します。
受精卵は、細胞分裂を開始すると「胚」と呼ばれます。通常移植されるのは、受精してから2〜3日後、もしくは5日目になります。その期間、インキュベーターと呼ばれる温度とガス濃度をコントロールし、体内と似た環境を作ることができる機械のなかで培養します。

また、多くの胚が得られた場合には、すべてを一度に移植するのではなく、凍結保存することが可能です。凍結保存された胚は、後日解凍して移植に使用できるため、妊娠のチャンスを複数回に分けて持つことができます。

タイムラプスインキュベーター

当院ではすべての患者さまに対して
タイムラプスインキュベーターを
使用しています

体外受精設備と管理体制について

胚移植

胚移植(ET)は、生殖補助医療における重要なステップの一つで、受精卵(胚)を子宮内に戻す治療方法です。細いチューブを挿入して、腟から子宮頸管、子宮内へと胚を戻します。体外で受精・培養された胚を適切なタイミングで子宮内に移植することで、着床と妊娠を目指します。

胚移植にはいくつかの方法があり、胚の発育段階や質、患者さまの体調やご希望に応じて最適な方法を選択します。

新鮮胚移植

採卵をおこなった周期のうちに、凍結せずそのままの状態で胚を移植する方法です。
胚の培養日数によって、分割期胚移植(採卵後2〜3日目)、胚盤胞移植(採卵後5〜6日目)、あるいはこれらを組み合わせた二段階移植といった方法があります。
凍結・融解の過程がないため、治療期間は短縮されます。ただし、採卵直後の身体はホルモンバランスが不安定になりやすく、子宮内膜の状態が必ずしも万全とは限らないため、凍結融解胚移植と比較して妊娠率が下がる可能性があります。

凍結融解胚移植

受精卵(胚)を凍結保存し、融解後胚移植する方法です。
実は、子宮というのは着床できる時期が限られており、その期間を逃すと良好な胚を移植しても着床しづらくなるといわれています。
つまり、妊娠は着床しうる期間・環境の子宮に着床しうる胚を移植しなければ成立しないということです。凍結融解胚移植は、その期間をきちんと考慮し移植をおこなえるため、妊娠率が向上するとされ、現在は当院でも9割以上が凍結融解胚移植をおこなっています。
受精卵(胚)の凍結保存は、移植胚以外に複数の良好胚が育った場合や、妊娠成立による副作用(OHSS)の重症化予防、妊娠率の向上など、その目的はいくつかあります。また、PPOS法での採卵の場合は新鮮胚移植はおこなわずすべて凍結し、次周期以降に凍結融解胚移植をおこないます。凍結することによる受精卵(胚)へのダメージをわずかながら認める場合もありますが、次の治療では卵巣刺激から胚培養までのステップをおこなわずに胚移植ができるため、身体的にも経済的にも負担が軽減され、有益な方法といえます。

凍結融解胚移植には次の2通りの方法があります。

①自然周期(排卵あり)

ご自身の排卵に合わせて胚移植の日程が決まります。通常、胚盤胞で凍結した胚を胚移植する場合は、排卵日から5日後が融解胚移植日となります。

排卵誘発の内服や注射をする場合もありますが、使用する薬剤が少なくてすむため、比較的身体に優しい方法といえます。

②ホルモン補充周期(排卵なし)

排卵しないよう月経中からホルモン剤を使用します。さらに黄体ホルモンの腟坐薬や注射を使用し、排卵後と同じ状態を作り出し子宮内膜を整えます。

ホルモン剤を調整することで胚移植日をある程度コントロールすることができ、胚のタイミングと子宮内膜のタイミングを合わせやすいことが特徴です。

各移植をサポートする方法

【アシステッド・ハッチング】

ハッチングとは、孵化の意味であり、ヒトの卵も透明帯と呼ばれる卵の殻にあたる部分から孵化し着床にいたります。体外受精で妊娠しにくい 理由の一つに、透明帯が厚く硬いために孵化が起こりにくく、その結果着床が妨げられている可能性が考えられています。
アシステッド・ハッチングは、透明帯を薄く、もしくは開孔し孵化を促す技術です。針でスリットを作る機械的な方法や薬剤で表面を溶かす化学的な方法などありますが、 当クリニックでは最も胚を傷つける心配のないといわれているレーザー法を採用しています。

【高濃度ヒアルロン酸含有培養液】

高濃度ヒアルロン酸含有培養液はヒアルロン酸を豊富に含む胚移植用の培養液です。 ヒアルロン酸は卵胞液、卵管分泌液、子宮腔内に自然に存在しており、粘稠度が高く、培養液として用いると胚が子宮内膜と接着するのを促進すると考えられています。
使用することで着床率が上昇するという報告がされています。

【GM-CSF・ヒアルロン酸含有培養液】

・GM-CSFは細胞の増殖や分化を促進するグロスファクターとして、胚の細胞数を増加させます。
GM-CSFは卵管や子宮内膜で発現し、受精卵が受け入れることで機能しますが、習慣流産(不育症)の患者さまではそれらが発現していないことが知られており、 GM-CSF含有培養液を使用することで流産率の低下や妊娠率の向上が認められています。
・着床時の受精卵の表面と子宮内膜表面のヒアルロン酸受容体同士を結び付けるヒアルロン酸を含有しています。

この培養液で胚を培養および移植した患者さまの妊娠継続率が4.5%、出生率が4.8%有意に改善したという報告があります。
当院では、PGT-Aを施行し良好胚が得られた方や、なかなか着床にいたらない方・初期流産を繰り返す方などを主に対象として使用しています。
(但し、自費診療での胚移植周期のみ ¥33,000)

黄体ホルモンの補充

卵巣のなかの卵胞は排卵すると黄体へと変化します。黄体からは黄体ホルモンと卵胞ホルモンが分泌されます。この2種類のホルモンは、子宮内膜を育てて着床しやすい環境に調整し、維持する作用をもっています。着床した場合は、黄体は妊娠黄体として妊娠12週頃まで存在し、黄体ホルモンを分泌し続けます。着床しなかった場合は、黄体は退縮し白体となります。基礎体温は上昇し、高温相を示します。

体外受精周期のため卵巣刺激、採卵をおこなうと体内からのホルモンが出にくい状況になってしまいます。そのため、胚移植後の着床率を高めるために、卵巣刺激の方法に関わらず、黄体ホルモンなどを補充して着床環境を整える必要があります。
黄体ホルモンは主にご自宅で腟坐薬を連日使用していただき、補助的に注射をする場合もあります。
凍結融解胚移植の場合も、特にホルモン補充周期の場合は妊娠黄体がないため、着床後も絨毛組織からの分泌が十分になるまでは黄体補充が必要となります(妊娠8~10週頃まで)。同時にエストロゲン製剤を投与し、子宮内膜を増殖・肥厚させます(主に、貼り薬と内服薬を処方します)。

腟坐薬

妊娠判定

胚移植から約10日後に血液検査で判定をおこないます。
判定前に出血などがあっても自己判断せず必ず「判定日」にはご来院ください。

〔判定日の流れ〕
・ご予定は、各担当医の『結果のお話』からお取り下さい。
・ご予約時間の30分前に来院し、採血を済ませてお待ちください。
・検査結果が出たら診察室にお呼びします。

妊娠判定陽性の場合:ホルモン補充周期の方はお薬を継続処方します。約1週間後にエコーで確認します。
残念ながら陰性の場合:次の治療についてご相談いたします。

当院では現在、集団で開催する〔体外受精説明会〕はおこなっておりません。
体外受精へステップアップされる時点で、まず医師より『IVFオリエンテーション』という冊子をお渡しいたします。
また、ベビーカレンダー社の『ARTパッド』というコンテンツに その内容をナレーションと動画でまとめており、ご自身の携帯端末からご覧いただけます。初めて体外受精をおこなう方は必ずご覧ください。(通院中の方のみを対象としておりますので、院内に案内掲示をしております)

IVFオリエンテーション ARTパッド

生殖補助医療の費用

体外受精の場合、採取した卵子の個数によって費用が上下します。
ここでは6〜9個の卵子を受精・培養し、2〜5個の胚を凍結保存するモデルケースの費用をご紹介します。

保険診療の場合

2022年4月より生殖補助医療は保険適用となりました。

体外受精(IVF)顕微授精(ICSI)
初診料880円
再診料390円
(月により400円)
検査費用
(超音波検査などを含む約17項目の検査)
約16,660円
採卵
(6〜9個)
26,100円
受精
(個数に関わらず)
9,600円
顕微受精
(6〜9個)
27,000円
受精卵培養
(6〜9個)
25,200円
胚盤胞加算
(2〜5個)
6,000円
凍結胚保存
(2〜5個)
21,000円
凍結融解胚移植36,000円

生殖補助医療 保険適用の条件

  • 治療開始時において、女性の年齢が43歳未満であること
  • 初めての治療開始時点の女性の年齢が40歳未満である場合は、通算6回まで(1子ごとに)
  • 初めての治療開始時点の女性の年齢が40歳以上43歳未満である場合は、通算3回まで(1子ごとに)
  • 婚姻関係または事実婚の関係にあること
  • 初回治療時はパートナーの同席と同意が必要となる

保険診療での生殖補助医療開始前に必要なこと

不妊治療を保険で受けるには、婚姻関係または事実婚であることが条件となり、医療機関での確認が義務付けられました。
確認方法については、《婚姻確認についてのお知らせ》をお読みください。

また、治療計画について患者さまとパートナーの方へ説明し、同意をしていただき、治療計画書にご署名いただく必要があります。
次の①②どちらかの方法で、お二人に説明をおこないます。

医師の指示が出たら

  • パートナーの方と一緒にご来院

  • 患者さまのみご来院していただき、診察時、パートナーの方にはビデオ通話※で患者さまと一緒に治療計画の説明を聞いていただく。

    ※LINE、Skype、Zoom 等、診察時にオンライン可能なもの

ビデオ通話の際には

  • パートナーの方とオンラインでビデオ通話ができる状態にして診察をお待ちください。(患者さまご自身の端末をご利用いただきます)
  • パートナーの方は運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書をご用意ください。

自費診療の場合

自費診療はすべて税込価格です。
費用は予告なく変更される場合があります。

体外受精(IVF)顕微授精(ICSI)
初診料3,300円
再診料770円
検査費用
(超音波検査などを含む約17項目の検査)
約80,650円
採卵
(6〜9個)
128,700円10,670円
受精
(個数に関わらず)
顕微受精
(6〜9個)
33,000円
受精卵培養
(6〜9個)
67,100円
胚盤胞加算
(2〜5個)
26,400円
凍結胚保存
(2〜5個)
44,000円44,000〜66,000円
凍結融解胚移植92,400円

生殖補助医療におけるリスク・副作用

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、生殖補助医療における卵巣刺激や排卵誘発剤を使用する過程で、卵巣が過度に反応・肥大しさまざまな症状が引き起こされる状態です。

症状は軽度から重度まで幅広く、軽度では腹部の膨満感や軽い腹痛、吐き気などが現れますが、中等度から重度になると腹水や胸水の貯留による呼吸困難、急激な体重増加、脱水症状、さらには血液の濃縮による血栓症のリスク増加といった深刻な症状が現れ、入院治療が必要になることもあります。

発症しやすいのは35歳以下の女性や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を持つ方、高用量の排卵誘発剤を使用した場合、または多数の卵胞が発育した場合などです。日本では入院を要するほどのOHSS発症頻度は0.8〜1.5%であり、軽度の症状はより多くの患者さまに起こりえます。

参考:公益社団法人日本産婦人科医会 11.生殖補助医療(ART)

OHSSが懸念される場合は、軽度であれば経過観察と十分な水分補給が基本ですが、中等度以上では点滴による水分管理や利尿剤の使用、血栓予防のための抗凝固療法が必要になることがあります。重症化を防ぐため、排卵誘発の方法を調整したり、採卵後の胚移植を延期して胚を凍結保存することもあります。

異所性妊娠(子宮外妊娠)

異所性妊娠(子宮外妊娠)は、受精卵(胚)が子宮内膜以外の場所に着床する妊娠のことです。最も多いのは卵管内での着床ですが、卵巣や腹腔内、子宮頸部などに発生することもあります。放置すると卵管破裂や大出血といった生命に関わる合併症を引き起こすため、早期発見と適切な治療が不可欠です。

発症しやすいのは、卵管の閉塞や癒着など卵管不妊因子を持つ方や、既往に異所性妊娠がある方などです。生殖補助医療における異所性妊娠の発症頻度は、胚移植して妊娠した症例の1〜3%と報告されています。

参考:公益社団法人日本産婦人科医会 11.生殖補助医療(ART)

多胎妊娠

多胎妊娠は、同時に二人以上の胎児が子宮内で成長する妊娠のことで、母子ともにリスクをともないます。母体側のリスクには、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、切迫早産、帝王切開の頻度増加などが挙げられます。

一方、胎児への影響としては、早産による低出生体重児や未熟児のリスクが高まり、発育遅延や先天異常のリスクが増加します。

生殖補助医療では、排卵誘発剤や体外受精(IVF)によって複数の胚が着床する可能性が高まります。日本産婦人科学会のARTデータブックでは、2023年の生殖補助医療による妊娠の多胎率が平均3.77%となっており、自然妊娠と比べて多胎妊娠率はおおむね高いことがわかります。

参考:日本産科婦人科学会 ARTデータブック,2023PDF版

採卵後早期にみられるリスク・副作用

採卵後早期にみられるリスク・副作用には、薬剤アレルギーや腹腔内出血、腸管損傷、感染症などが挙げられます。

薬剤アレルギーは、採卵時に使用される鎮静剤や麻酔薬、排卵誘発剤に対して発生し、軽度の発疹やかゆみ、息苦しさなどを引き起こす可能性があります。

腹腔内出血は採卵針が卵巣や周囲の血管を傷つけることで起こり、腸管損傷は針が誤って子宮の後方にある腸管を穿刺した場合に起こります。軽度の場合は自然に止血されますが、出血量が多いと緊急手術が必要になることもあるため注意が必要です。

また、感染症は腟内の細菌などによりまれに起こる副作用です。採卵は腟内を充分に消毒・洗浄してからおこないますが、それでも細菌が侵入することがあり、発熱や腹痛、悪寒などの症状が現れます。

生殖補助医療について詳しくは
こちら

生殖補助医療(体外受精)に関する
よくある質問

40歳未満の女性の場合、3〜4回目で妊娠することが多いとされています。3回以上の胚移植で妊娠しない場合、着床障害の可能性が考えられるため、原因を特定するための検査や顕微授精へのステップアップが検討されます。

採血・排卵誘発剤の注射・採卵・胚移植の際に痛みをともなうことがあります。しかし、我慢できないほどの強い痛みはなく採卵時も麻酔下でおこなうため、強い痛みを感じることはありません。
体外受精で痛みを感じやすいタイミングや軽減方法についてはこちら>

体外受精の重篤な副作用はまれですが、排卵誘発剤の使用により卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症するリスクがあります。卵巣刺激の薬や注射への反応は個人差がありますが、刺激によって卵巣が腫れて血液中の水分が血管の外へ漏れ出し、重度の場合腹水や胸水となり貯留するケースがあります。腹痛や便秘などが起こる場合もあります。その他、採卵による出血や感染なども、まれに生じることがあります。

KLCは、下記臨床に関する
実施の登録医院です。

  • 体外受精・胚移植およびGIFTの臨床実施に関する登録
  • ヒト胚および卵の凍結保存と移植に関する登録
  • 顕微授精の臨床実施に関する登録

日本産科婦人科学会への報告実施と
個人情報について

  • KLCは、生殖補助医療実施施設として日本産科婦人科学会に登録しています。
  • 日本産科婦人科学会では、生殖補助医療を受けた方について報告することが義務づけられており、KLCで生殖補助医療を受けた方についても症例報告をさせていただいています。
    その際、個人情報につきましては、十分な配慮(個人が特定されるデータとしないなど)をし、不正な目的での使用がないことをお約束します。

監修医師紹介

山本 篤 医師

神奈川レディースクリニック理事長 兼 院長

山本 篤 医師

神奈川レディースクリニックは、2003年の開院以来「無理のない医療」を大切に、患者様に寄り添ってまいりました。私もその理念を受け継ぎつつ、新しい医療の可能性を取り入れ、ご夫婦の未来を支える医療を実践していきたいと考えています。
妊活や不妊治療は目に見えない体の変化に向き合うため、不安を感じることも少なくありません。私は体の中で起きていることや今後の見通しを丁寧にお伝えし、納得感を持って治療に臨んでいただけるよう心がけています。
経験と最新の知見を融合させ、安心できる場で最先端の治療を提供してまいります。どうぞ安心してご相談ください。

経歴

東京大学薬学部薬学科卒
平成17年東京医科歯科大学(現、東京科学大学)卒業
平成17年~19年・27年~29年東京医科歯科大学附属病院周産女性診療科
平成19年~22年・29年~令和2年獨協医科大学付属埼玉医療センター
産婦人科・リプロダクションセンター  講師
平成22年国立成育医療研究センター 不妊診療科
平成22年~27年国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所
東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野 :医学博士学位取得
令和2年~六本木レディースクリニック 神奈川レディースクリニック 勤務
令和7年神奈川レディースクリニック院長就任

資格・所属学会

  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 日本産科婦人科学会 指導医
  • 日本生殖医学会 専門医
  • 日本生殖医学会 指導医
  • 日本性科学会 理事
  • 日本性科学会認定 セックスカウンセラー
  • 日本受精着床学会
  • 日本人類遺伝学会
  • 日本がん・生殖医療学会
  • 日本生殖心理学会
  • 日本生殖医療支援システム研究会
  • 早稲田大学非常勤講師
  • Wellness AP Science 株式会社 医療顧問

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